国際交流基金アジアセンターは、「第31回東京国際映画祭」と連携し、「『アジアの未来』部門 国際交流基金アジアセンター特別賞」を、出品作品『武術の孤児』を監督したホアン・ホアン(黄璜)氏に授与することに決定いたしました。本賞は、文化の違いを越え、国際的な活躍が期待される新鋭監督に贈られるものです。授賞式では、国際交流基金理事長の安藤裕康よりトロフィーを授与いたしました。
国際交流基金アジアセンター特別賞は、文化の違いを越え、国際的な活躍が期待される新鋭監督に贈られます。今年の審査委員は、ジェレミー・スゲ氏(ユニフランス 日本・韓国・東南アジア担当)、ピート・テオ氏(ミュージシャン/俳優/映画監督)、山下敦弘氏(映画監督)の3名が担当。受賞者には、トロフィーとともに、副賞として日本短期滞在の機会が贈呈されます。
受賞監督:ホアン・ホアン氏について
1985年中国・安徽省出身。2016年、北京電影学院監督科修士コースに進学、18年に卒業。35ミリ短編作品『No Country For Chicken』が第62回ロカルノ国際映画祭Leopards of Tomorrow部門に選出され、映画ビデオ字幕賞を受賞。
ホアン・ホアン監督 コメント
東京国際映画祭、審査員の皆さん、 今作のスタッフ・キャストの皆さん、そしてこの作品のプロダクション会社に感謝いたします。もしかしたら、いま、私はアジアの未来からアジアの過去になってしまうかもしれませんが、今回のことは素晴らしい思い出になると思います。本当にありがとうございました。
審査委員代表・総評
今年度の国際交流基金アジアセンター特別賞は、洗練されたビジュアル、物語を語るスタイルで描いた監督に授賞いたします。彼の描くテーマは大変印象的でしたが、特に彼の映画に対する幅広い表現力が素敵でした。現代アメリカ映画の影響を受けつつも、アジアのセンスもしっかりと伝えていました。彼の不条理なユーモアのセンス、鋭い知性は稀であり、今後もサポートするに値すると思いました。この賞を監督に渡すことによって、 さらに視野を広げていただき、監督の持っている間違いのない潜在能力を満たす機会としていただければと思います。この結果は審査員の満場一致でした。今後の彼の活動に期待したいと思います。
ピート・テオ(ミュージシャン/俳優/映画監督)
東京国際映画祭出品作:『武術の孤児』(2018、中国)
1990年代後半の中国内陸部。中国武術を専門に教える中学校に国語教師として赴任したルー・ヨンホンは、武術の修行が中心の校風に、いわゆる文系教師として戸惑いながら教室での授業を行うが、上手くいかないことばかり。そんな彼の心のマドンナは保健室に勤める女医アン・ランだが、彼女の気持ちは分からない。逆に悩みのタネは、武術の修行になじめず脱走を試みるいじめられっ子のツイシャンだ。あるときツイシャンが再度の脱走を敢行して町の家族の元をめざし、事態が動き始める……。四季のパートに分割された本作は、それぞれの冒頭にカンフーの達人が旅を続ける幻想的なシーンを挿入し、またブルース・リー、ジャッキー・チェン、ジェット・リーへの言及があるなど、中国武術への愛が感じられる作りとなっている。